● 最近の子どもは脳への刺激が少ない!?
脳と身体は連動しています。そもそも、私たちが何も意識せずに歩いたり、モノを持ったり、ふり向いたりと自然に身体を動かすことができているのは、脳の働きのおかげです。
脳の神経細胞には樹状突起という、枝状のものが出ています。この樹状突起は他の神経細胞から出ている樹状突起と
結びつき、樹状突起同士の間を電気信号が流れることで、人は様々なことができるようになっていくわけです。
脳が発達中の幼少期の子どもにとって、この刺激とは机で行う学習だけではなく、
五感を複雑に使った動きのほうが有用です。複雑な動きをすればするほど、脳の神経回路は強固になり、
多くの領域を使って、状況判断から運動の実行までを行っているからです。
ですから、体操で行うようなすばやい方向転換などの敏捷な身のこなしや、状況判断・予測などの思考判断を
必要とする全身運動は「脳をたくさん働かせ、成長させること」につながるわけです。
ところが、最近の子どもは脳への刺激が減っているように感じます。というのも、幼稚園に通わせているお母さんから、「最近の子は“要介護状態”のようです」という話を聞いたからです。言われてみれば、最近は幼稚園へや習い事の送り迎えは自転車や車。家はマンションで、エレベーターで自宅階へ上がる。帰ってからは、外遊びをすることもなく家の中でおもちゃやゲームをして過ごす……という
生活パターンを送っている子どもたちが少なくないように感じます。
遊び場がないというだけでなく、歩いてすらもいないわけです。ですからその分、幼稚園や保育園で十分に体を動かせればいいのですが、
それもなかなか難しいのが現実です。園庭がないところや、あっても狭いところなど、厳しい条件のところもあるからです。
● 子どもの脳を育てるには正しい順番がある!
脳の成長には、順番があります。最初に、体を司る部分。主に、大脳辺縁系、視床、視床下部、中脳、橋、延髄などが続き、
生後5年くらいかけて育っていきます。
次に成長するのは、言語や微細運動、思考などを司る部分です。主に大脳新皮質のあたりで、1歳頃からは育ちはじめ、学校での学習などから刺激を受けて、時間をかけて18歳くらいまで成長します。いわゆる「脳」と言って私たちが真っ先にイメージする、「頭がいい、悪い」の判断材料になる記憶力や計算力、語彙力などです。こうした認知能力は、この部分の成長によって発達していきます。
最後に、10歳を過ぎた頃から、心を司る前頭葉が育ちます。非認知能力と呼ばれる心の動きは、
人間が人間であるために必要な高度な機能です。
子どもの脳の成長を促すには、この順番を守ることが重要だと言われています。つまり、体がしっかりコントロールできないうちから、
計算や読み書きだけをさせても学力は伸びにくいし、挑戦する心やリーダーシップなどは身につきにくいのです。